ハガキで鍛える

 学力研ニュースの原稿を以下に載せます。

「子どもを伸ばす夏休みにするために(高学年)ハガキで鍛える

ハガキ提出の宿題
「先生にハガキ二枚以上出すこと」
 ある年の夏休みの宿題の一つです。

セミのぬけがらをよく見かける今日このごろです。先生お元気でいらっしゃいますか。ぼくは今は元気ではありません。昨夜から熱を出してしまいました。RI蚊(蚊ではなく、蚊の絵あり:荒井)でCがついたのでショックをうけたせいでしょうか。二学期はC0にします。林間までには復活します。

 夏休みに届いた一枚目のハガキです。書き出しがうまいと、思いませんか。
 授業の中で、十分ほど、暑中お見舞いの書き出し指導をしたのです。
『「夏」という言葉を使わないで、夏をあらわす文を書いてください。』
 全員発表させる時間もなく、書けた数人を発表させただけでした。
 でも、今日ハガキを送ってきた子は、見事な書き出しで書いています。
「お元気でいらっしゃいますか。」と尋ね、「ぼくは元気ではありません。」と逆説で答えるところが、うまいです。
 8月の終わり頃には、次のハガキも届きました。

 先生残暑お見舞いもうしあげます。ぼくは台風ですずしくなったからクーラーじゃなくて扇風機の生活になりました。さっき暑中おみまいってかいてたらおばあちゃん残暑やでと注意されました。9月やからそやなと思いました。
 でもどっちが正しいのですか? 

 いつまでが暑中で、いつからが残暑かは、ハガキを出さないと気付けません。
【暑中見舞い】は、梅雨明けの頃(7月半ば頃)から立秋(8月8日頃)までに出します。それ以降は【残暑お見舞い】となるのです。
 この年の8月29日の届いたハガキの現状です。
・一枚目出した子…37人(出してない子1人)
・二枚目出した子…30人(出してない子8人)
・ハガキの届いた枚数…82枚
 一番多い子で、9枚も書いた子もいました。一枚目を出してない子には電話をし、二枚目を出してない子には次のハガキを送りました。

 8月24日しめ切りの二枚目のハガキが、まだ先生の所へ届きません。
 そこで、先生の方から出すことにします。

 いよいよ2学期が始まります。6年生にとっては、小学校最後の運動会があり、そして修学旅行があります。28日、修学旅行の下見に行ってきました。スペイン村・水族館・イルカ島と、見てまわりました。
 きっと、楽しい修学旅行になるだろうな、と思います。
 では、9月1日に会いましょう。

 メールやLINEなどのある今、ハガキを書くことはまれになってきました。
 相手の郵便番号と住所と名前を書き、自分の住所と名前も書き、そして、文面を書かないといけません。さらに、ハガキが家にない場合は、わざわざお金を出して買いに行かないと、いけません。
 それでも、ハガキで自分の思いを伝える文化を無くしてはいけないと思うのです。
 先生にハガキを出させる宿題は、子どもにとっても、教師にとっても、面倒な宿題です。
 ただ、約40日の夏休みの中で、ハガキを通して、教師と一人一人の子どもが、思いを伝え合う、そんな機会を作ってみてもいいのではないでしょうか。

読書ハガキ提出の宿題
 別の年に、
「本を一冊読んだら、先生にその本の感想をハガキで書いて送りましょう。」
という宿題を出しました。

ぼくは、『夢をかなえるゾウ』という本を読みました。読んだきっかけは、姉が読んでいて面白そうだったからです。内容は、関西弁を話すゾウの神様が夢をなくしたサラリーマンのところに現れて、くつをみがくなどの課題を毎日出してサラリーマンを立派な人間に成長させていくという話です。とくにぼくが気に入っている課題は身近にいる「一番大事な人をよろこばせる」という課題です。これからこの課題を実行していきたいと思います。

 読んでいる本もレベルが高いですが、本の内容紹介だけでなく、自分がこれからどうしていきたいかを書いていることが立派です。この子は、ハガキ一枚のスペースで書き切れなか
ったようで、もう一枚紙をハガキに貼って、そこに続きを書き込んでいました。これでも50円で届いたのです。

残暑お見舞い申し上げます。わたしは、元気に、遊んでいます。よんだ本は、スパゲッティがたべたいな。と、コアラたんていです。しゅくだいもほとんどおわりました。湯里なつまつりがたのしみです。

 読んだ本の内容については全く触れてないのですが、残暑お見舞いを書いてるところがいいです。
夏休みこそ教師が一番学ぶ時
 一学期、多くの教師は、毎日の実践をがんばっていたことでしょう。
 野口芳宏先生が、
「実践埋没型の教師になるな。」
とおっしゃったことがありました。
 日々の実践の忙しさにかまけて、教師としての努力、人間力を高める努力をおろそかにしてはいけないのです。
 夏休み、子どもから数日おきにハガキが届くことで、教師として努力しなければ思えるのです。

(2014.6.29)