分をわきまえる社会とは?

 江戸時代は、士農工商の身分社会でした。
 井沢元彦氏は、「分をわきまえた」社会だと、表現しています。
 一方、明治維新によって、四民平等の社会となります。能力が高ければ、政治家になることもできた社会です。
 ただ、そこには競争がついてきます。競争に勝ったものだけが、いい思いができる社会ともいえます。
 向山先生は、戦国時代と明治時代が似ているという斬り込み方を授業でされています。戦国時代は武力の高い人が出世し、明治時代は学力の高い人が出世できるからです。
 江戸時代、現在の視点から見ると、身分が固定され逼塞間ただよう社会であるかのように見えます。でも実際には、お互いが分をわきまえ、その中で、満ち足りた生活をしていたらしいのです。
 平等であることが正しい、という一面的な捉え方で世の中をとらえてしまうと、現実の社会で生きる人の思いが見えなくなってしまいそうです。
 生まれたときから、自分の職業がある程度決まっていて、でも、その中で精一杯がんばり、分をわきまえて生きていく、それも一つの幸せかもしれません。
 職業選択の自由ゆえに、どの仕事を選んでいいのか迷い、やりたいと思えた仕事にはつけず、ぶらぶらしてしまう。そんな現実も今の社会にはあるわけです。

(2011.7.30)