「ごんぎつね」の起承転結

 ふと、「ごんぎつね」の起は、どこだろう、と思いました。
 最初に起きる事件は、ごんが兵十のうなぎをとるところです。でも、ここは起ではない気がします。主人公のごんの中の願い(思い)がないからです。

「ちょつ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

 兵十の葬式に立ち会い、兵十のおっかあが死んだことを知り、自分のいたずらを後悔する。これをとりあえず、起と考えてみます。
 後悔の次つづく承は、償いです。
 次の日から、ごんの償いが始まります。
 後悔し、償いをしたあとに、普通なら待っているのが赦しです。
 しかし、結を見ると、ごんは兵十に撃たれてしまいます。赦しではなく、断罪されたわけです。
 償っているのに、なぜ断罪されなければいけなかったのか、その原因が転にあるはずなのです。

「おれが、くりや松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼を言わないで、神様にお礼を言うんじゃあ、
 おれは、引き合わないなあ。」

 これまでは償いだったのに、礼を言われたいとごんは思ったわけです。
 純粋な償いではなくなったことで、赦しもなくなったけです。

(2012.7.25)