ポジティブにあきらめるために

 中西進『ひらがなでよめばわかる日本語』(H20.6.1新潮文庫)より。

 秋は収穫の季節です。十分に食べられることができる。だから、充足するという意味で、秋は「あき(飽き)」と名付けられました。

「明らか」も「諦める」も、秋の仲間だそうです。

 では「あきらめる」とは何か。これも、ものごとの状態を明らかにするよう、十分に努力をし、もうこれ以上はできないというところでやめる。それが「あきらめる」なのですね。「諦」という漢字をあててしまったことで、本来の意味がわかりにくくなっていますが、「あきらめる」には本来、今日使われているような、「もうしようがないや」とものごとを投げ出すような、ネガティブなイメージはありませんでした。
 おもしろいことに、英語の「ギブ・アップ(give up)」も同じです。「ギブ」を「アップ」する。あることを成し遂げるため八方手を尽くし、「ギブ」していく。そして、もうこれ以上「ギブ」できないところまできて、「アップ」する。そういうふうに考えれば、ただ「降参する」のではなく、「十分」という意味が生きてくるでしょう。

「あきらめる」という言葉をポジティブに使えるようになりたいものです。
 まさに、人知を尽くして天命を待つ、なのでしょうね。

(2014.7.27)