「海のいのち」の主人公、太一の夢は、次の通りです。
「ぼくは漁師になる。おとうといっしょに海に出るんだ。」
しかし、瀬の主をつかまえようとして太一の父は死にます。
夢の1つめはかなえても、2つめはとうていかないません。
ならば、太一の2つめの夢はどう変わったのでしょうか。
「ぼくは漁師になる。おとうを殺した瀬の主をつかまえるんだ。」
上記は1つの例です。明るい夢、暗い夢に変わっています。
でも、変わった2つめの夢があるからこそ、中学を卒業する年の夏から、瀬の主のいる瀬で一本つりの漁師をしている与吉じいさに弟子入りするのです。
物語の中に、「起」が隠されています。その隠されたものを引っ張り出す作業が、読解ともいえます。
「自分では気づかないだろうが、おまえは村一番の漁師だよ。」
与吉じいさに、太一はこう言われます。でも、太一はこの言葉に満足できたのでしょうか。
「村一番の漁師だった父はいない。自分が父を超える漁師ならば、瀬の主を捕まえられるはずだ。」
こう思うのではないでしょうか。
(2011.11.5)