赤えんぴつだから、頭をさげる

 兵庫合宿での向山洋一氏の講座の続きである。
「赤えんぴつだから、頭をさげる」という言葉は、すごくインパクトがあった。
「赤えんぴつで○をつけなさい」と言ったら、必ず赤えんぴつで○つけさせる。
「赤ボールペンでいいですか」という最初のアドバルーンには、
「先生は赤えんぴつって言ったんですよ。赤えんぴつで○をつけなさい。」
 もし、忘れていたんなら、教師のを貸す。
 向山氏は、○つけが終わったら、すぐに赤えんぴつを持ってこさせるそうだ。 私の場合、子どもが休み時間に返しにくるまで、放っておいた。
 しかし、それをすると、返さない子がいたりする。借りたものに対するいいかげんな態度を私が助長してるようなものだ。

貸した赤えんぴつは、授業中にみんなの前で、(教師に)返させる。

 そうすることで、赤えんぴつを忘れる子が減っていくそうだ。
 しかし、それでも、赤えんぴつを続けて忘れる子がいる。
 例えば、3回続けて忘れてきた場合、向山氏は次のように対処する。これがまた、すごい。
「先生は、大切だといったんですよ。」
 これまで、向山氏は赤えんぴつを持ってくることの大切さを語っている。
「今まで、一度でも赤えんぴつを持ってきたことのある子は、手をあげてごらん」
 これで、その子以外の全員の手があがるそうである。
 クラス全員の力を使う、このテクニック、実にすばらしい。
「クラスの全員が持ってきたことあるのに、君は一度も持ってきていない。」
 そして、「大事なことだから、お父さんに電話します。」
 こんなこっちゃ、向山氏の追求は終わらない。
「お父さんは何時に帰ってきますか。」
 そういうとき、たいていの子は、「遅いです」とか言って逃れようとするらしい。
「でも、家に帰ってくるんでしょ。」と向山氏は追い込む。
 そして、お母さんの帰宅時間まで、聞き出す。
 それから、しばらくして授業を続け、何気なく、その子に言う。
「さっきのことだけど、君が、あした絶対もってこれるんら、電話しなくてすむね。どうする?」
 間をおいて、せめるこのタイミングが絶妙である。
 そうすると、必ず、その子は次の日、赤えんぴつを持ってくるそうである。
 クラスの中で問題を起こす子は、得てして、小さな問題で教師を試していく。
 そして、そういう子に対して、教師は勝っていかなくてはいけない。
 赤えんぴつなら、勝てるのだ。だから「赤えんぴつだから、頭をさげる」のだ。

(1998.8.30)