ノート作業の必要性

 問いに対する自分の解をノートに書くからこそ、本当の意味で、子どもは授業に参加できます。
(それ以外に、学習の足跡となったり、学習規律を鍛える道具ともなります。)
 とはいっても、ノートに書かせない授業が多いです。
 ノートを書かせない問題点を野口芳宏氏は次のように書いています。

 この進め方には、次のような問題点がある。
(注:ノートを書かせないで、挙手指名による進め方のことです。荒井)
 ① 一部の上位児で授業が進行する。
 ② 手を挙げない子は指名されないので発言の機会はずっと与えられな  い。
 ③ そのような子どもは常に傍観者の位置に立たされて終わる。
 ④ 手を挙げない子は決して考えていないのではない。しかし、授業の中では活躍の場が与えられない。
 ⑤ 話し合いも、一部の有力な子どもの考えに引きずられ、歪められやすい。
          『授業で鍛える』P.103明治図書1986.4より

  研究授業でよくみられる授業の風景が、ここにはあります。
 教師と一部の児童との一問一答で授業が進められていくのです。
 さらに野口氏は、ノートに書かせる利点についても述べています。

・全員が「発言」をしたことになる。
・他人の考えに左右されない、自分の判断を持てる。
・書くことによって、その後の話し合いに主体的に立ち向かうことができる。
・話すこと、発言することの苦手な子、あるいは内気な子どももこれならば学習に参加できる。
・話し合いよりも、個性的で多様な反応が期待できる。
・机間巡視によって、ユニークな考えを発見し、効果的な指名の計画が立てられる。
        『授業で鍛える』P.104明治図書1986.4より

 1つ目の全員が「発言」したことになる、というのは重要なことです。
 これは、教師の問いに対して、自分自身の考えを表明している、答えている、ということです。
 もしノートに書かせなかったら、その子がほんとに問題について考えているかどうかは、発言させてみないと分からないのですから。
 どの子も伸ばすという視点に立てば、ノートに書かせることは、基本中の基本といえるでしょう。
 さて、どんな時にノートを書かせるか、まとめてみます。

ア 日付・ページ数などを書かせる。(学習の記録として)
イ 教師の簡単な問いに、答えだけを書かせる。
ウ 拡散的発問とその答えを書かせる。(答えはたくさん)
エ 集中的発問とその答えを書かせる。(答えは1つ。理由も書く。)
オ 教科書の写真やイラスト等を描き写す。
カ 重要語句やポイントになる文を書き写す。
キ 今日学んだことを書く。

 教師が出す全ての問いをノートに書かせると、授業時間が足りなくなります。拡散的発問と集中的発問に絞って、発問を書かせます。
 教科書の写真やイラスト等は、描き写すだけで、いろいろな気づきをもつことができます。
 ですから、描き写した後は、気づいたことをノートに書かせるようにするといいです。
 子どもの書いたノートをコピーしておくと、それが教師の授業記録となります。次に教える時に、このコピーが活きるのです。

(2005.8.26)