危険物類による災害事例


 危険物を原因とする過去の災害事例を振り返り、その火災の危険性に関して知見を得ることは、火災予防上重要だと思います。そして、今後の管理がどうあるべきかを考えてみることも大切ではないでしょうか。

 

事例-1(出典:神戸市消防局 神戸市民防災総合センター)

危険物第四類の誤表記による火災

キーワド:引火点、第一石油類、誤表示

 殺虫剤やヘアケア製品など、日常において、一般の方々が消防法上の危険物が含まれている製品を使用することは多い。
 危険物が含まれている製品の容器には、容量などに応じて、原則として危険物の「品名」・「危険等級」・「火気厳禁の文字」・「危険物の数量」などの表示が義務付けられており、その表示は使用者に製品の危険性を正しく伝える指標にもなっている。
 「第一石油類」は引火点が21℃未満であるのに対し、「第二石油類」の引火点は21℃以上70℃未満であるため、「第一石油類」と「第二石油類」では、引火の危険性が大きく異なってくる。
 平成25年度神戸市内において、ライター用オイルの取扱いを、不適切に行ったことにより発生した火災 事故の鑑定を実施したところ、「第四類第二石油類」と表示されているにもかかわらず、その製品の引火点を測定したところ、明らかに21℃未満であった。
 その後、鑑定結果を受けて、輸入代理店に表示の訂正を求めたところ、すみやかに誤表示の訂正に繋がっ た。

 

事例ー2(出典:東京消防庁)

「シンナーと混合した塗料の吹き付け作業中に出火した火災」

出火時分 10 月 11 時ごろ
用 途 等 工場 準耐火造2/0 延665 ㎡
被害状況 建物半焼1棟 445 ㎡、ダクト12m焼損 負傷者1人

<概 要>
 この火災は、工場の1階塗装ブース内から出火したものです。
 出火原因は、塗装ブース内で精密部品にシンナーと混合した塗料の吹付作業をしていた際、作業員が着ていた衣服に帯電した静電気が放電し、気化したシンナーに着火し出火したものです。
 作業員(40 歳代男性)がスプレーガンを使用して塗料の吹付作業をしていると、突然塗料に火がつきました。作業員は周りにいた別の作業員に知らせ、知らせを聞いた作業員が近くに設置されていた粉末消火器を使って初期消火を行いましたが消火できなかったため、事務所の電話で119 番通報しました。

<教 訓 等>
 シンナーは気化しやすく、小さな火源でも引火してしまう性質があります。シンナーなどの危険物類を取り扱う場合は、十分に換気を行い気化した危険物類が滞留しないように注意しなければいけません。
 また、静電気や電気機器のスパークが発生しないように、帯電防止用衣類を着用したり、防爆タイプの機器を使用したりする必要があります。
 工場等で危険物類を取り扱う場合は、作業員への教育を徹底し、正しい知識を身につけさせましょう。危険物取扱者の資格を持った人物を配置することも事故防止の有効な対策と言えます。

 

事例ー3(出典:東京消防庁)

「給油取扱所に置かれたオイルチェンジャーから出火した火災」

 出火時分 12 月 6時ごろ
用 途 等 給油取扱所 耐火造2/0 延128 ㎡
予防規程 該当 保安監督者選任あり
被害状況 オイルチェンジャー1焼損

<概 要>
 この火災は、給油取扱所の敷地内に置かれたオイルチェンジャーを使ってガソリンの抜取作業を行った際に出火したものです。
 出火原因は、店員(50 歳代男性)が軽油車にガソリンを誤給油してしまったため、オイルチェンジャーを使って、ガソリンの抜取作業を行った際、オイルチェンジャーのスイッチ接点火花が気化したガソリンに引火し出火したものです。
 店員がガソリンを8リットル程度抜き取ったところで、オイルチェンジャー上部フロートからオレンジ色の炎が出ました。店員は事務所入口付近に置かれていた粉末消火器を使って初期消火を行いました。オイルチェンジャーは火災により壊れてしまったため、手動ポンプを使い抜取作業を完了させた後、事務所の電話から119 番通報しました。

<教 訓 等>
 オイルチェンジャーはエンジンオイルなどのオイルを抜き取るための装置です。本体には、「ガソリンは絶対に使用しないで下さい。」、「ガソリン厳禁」、「爆発、火災発生の恐れあり」といった注意書きが記されており、ガソリンの抜取作業に使用すると大変危険です。
 すべての給油取扱所では危険物取扱作業手順や保安業務等を定めた予防規程が作成されています。給油取扱所で働く店員に対しても予防規程の内容を周知するとともに、特に誤給油等のトラブル発生時の対応については日頃から十分指導し、対応方法等を熟知させておく必要があります。